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週明け8月5日の東京株式市場が大荒れの展開となった。日経平均株価の終値は前週末比で4400円超も大幅下落した。昭和62年秋、米国株価が暴落した「ブラックマンデー」時を上回る史上最大の下げ幅である。
米景気の減速懸念や急速な円高に伴う暴落だ。市場は売りが売りを呼ぶパニックのような状況に陥った。終値の3万1458円42銭は、7月11日に更新したばかりの最高値を1万円以上も下回る。年初来の株高機運は吹き飛んだ形だ。
もちろん、日米ともに経済が極度に悪化しているわけではなく、これほどの暴落は行き過ぎの感がある。米国の動向次第で東京株が反転上昇する可能性もあり、いたずらに先行きを悲観することは避けたい。
むしろ株価や円相場の不安定化が実体経済に及ぼす影響を冷静に見極める必要がある。企業心理や消費を下振れさせる恐れはないか。政府・日銀は混乱拡大への警戒を強めるべきだ。
日銀が7月31日に追加利上げを決めた後に進んだ円高も一段と加速した。これまでの円安は輸入品の価格高騰を通じて家計を圧迫した。本来なら極度の円安の是正は望ましいが、変動が急激すぎると混乱も生じよう。円高に伴う輸出企業の収益悪化が見込まれて株価下落を助長したことは懸念すべきだ。
東京株が売り一辺倒となったのは米国株式市場が大幅安となった流れを引き継いだためでもある。認識しておくべきは、日米ともに経済の大きな転換点に差し掛かっていることだ。
米国ではインフレの鈍化傾向などを踏まえて金融政策の方向性が見直され、米連邦準備制度理事会(FRB)は早ければ9月に利下げを検討するとみられている。そんな中で雇用の減速を示す統計が発表され、景気後退懸念がさらに強まった。
逆に日本は、賃上げの広がりなどで物価と経済の好循環が期待されるようになった。先に日銀が追加利上げを決めたのもこのためだが、植田和男総裁は年内のさらなる利上げを否定しておらず、米国との方向の違いが一段と鮮明になっている。それが市場の疑心暗鬼を招いた。
政府・日銀は難しい舵(かじ)取りを迫られる局面だ。丁寧な政策運営や情報発信をなすべきは当然である。実体経済の悪化には適切な対処が求められよう。
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2024年8月6日付産経新聞【主張】を転載しています